愛犬の健康にはドッグフードと手作りご飯どっちがいい?

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ドッグフードを考えるようになったきっかけ

「犬を飼いたい」と思ってから、数年。

まだ犬も飼っていないのに、「犬のしつけ」「犬の飼い方」などを本やネットで勉強する日々。

そんな中、盲導犬クイールを育てた多和田さんの本に、次の記述がありました。

自然食を与えられている犬のほうが、ドッグフードだけで給餌されている犬よりも、1.5倍程度の平均余命があるという研究結果も読んだことがあります。

「クイール流 愛犬のしつけ方」多和田悟著 実業之日本社

しつけにばかり関心が行き、犬の食事や健康について全く無知だった私は、この一文に大きな衝撃を受けました

それからというもの、犬にとって最適な食事、バランスの取れた食事について調べるようになりました。

多和田悟さんの著書 犬への愛情を痛いほど感じます

ドッグフードと手作りのごはん、どっちがいい?

ドッグフードは犬に必要な栄養素が全て含まれており、長期保存もでき、安全で簡単。ドッグフードさえ食べさせておけば大丈夫。

犬の手作りご飯は、栄養が偏って良くない。人間の食事と犬のご飯は別。危険な食材があるから手作りしない方がいい。

そんな情報も目にします。

愛犬の健康にとって、ドッグフードと手作りご飯のどちらが良いのか?

一度はみなさんも悩んだことがありませんか?

ドッグフードも手作りのご飯も千差万別で、商品や調理によっていくらでも変わりますよね。なので、一概にどちらが良いか悪いかを判断するのは難しいでしょう。

しかし、手作りする時間やコストが許すのであれば、犬の健康のためには手作りの生鮮食品のほうが良い可能性がいくつかの研究で報告されています(最新の論文も交えて後述)。

ドッグフードの安全性に対する懸念

ドッグフードには様々な問題点があることは周知の事実です。

僕はカリカリが大好き
ドッグフードの問題点
  1. 食品衛生法の対象ではなく「食品」ではない
  2. 国産であっても原産国は不明
  3. 添加物の基準と表記の問題

ドッグフードは食品衛生法の規制対象外

これが、ドッグフードの問題点を大きくする諸悪の根源と言っても良いと思います。ペットフードは「食品」の扱いではなく、「モノ」という扱いなんです。

犬用ささみに混入していた「サルモネラ菌」で15匹のワンちゃんが亡くなった痛ましい事件がありましたが、食品ではない以上、製造過程における細菌基準もありません

ペットフード安全法が存在しますが、ゆるい規制のため、実質、その製造管理は事業者の裁量に委ねられています。

多くの飼い主は、ペット=家族と考えており、市販されているペットフードも人間の食品と同じ基準で製造されていると思っています。

ドッグフードが食品衛生法で規制されていないことで、その信頼性は大きく損なわれています

ペットフード先進国のドイツでは、「ヒューマングレード」と呼ばれる、人間用と同じ(人が食べても安全)な食材が使用されることが求められています。

日本でもヒューマングレードを謳うペットフードがありますが、規制する食品表示法がないため、本当にそうなのかは企業のモラルに依存しています。

国産であっても原産国は不明

「国産」と記載されていると、なんとなく安心感がありますよね。

ドッグフードは、原材料が外国産であっても、最終加工工程が日本であれば「国産」と明記することができます。

日本では大きなニュースにはなりませんでしたが、2007年に中国産原料を用いたペットフードが原因で、アメリカ・カナダで少なくとも8500匹のペットが死亡する大事件が起こりました。

ペットフードに有害物質(メラミン)が混入していたことが原因であり、中国では、その翌年に、メラミンが混入した粉ミルクを飲んだ赤ちゃんが死亡するという事件が起きています。

日本は世界中の様々な国から農産物や畜産物を輸入しており、国産という表記があるから安心とは言えません。

添加物の基準と表記の問題

添加物には、BHA、BHT、エトキシンなどの防腐剤・酸化防止剤、亜硝酸ナトリウムやタール色素などの発色剤・着色剤があります。これらは、発がん性、腎機能障害、肝機能障害、アレルギーなどを引き起こす可能性が示唆されています。

国が認可していて、微量で問題が起こることは稀な成分でありますが、摂取しないに越したことはありません。

ペットフードの添加物の上限基準は、人の食品基準より甘く、添加物が多量に使用されている粗悪なペットフードもあります。

また、原材料に使用されている添加物は、表記しなくても良いことになっています。

つまり、添加物を大量に使用していたとしても、原材料に使用されている場合には表記されないため、消費者にはわかりません。

「無添加ドッグフード」が本当に無添加なのかは企業のモラル次第です。

ペット先進国のフード

動物愛護が進んでいる欧米はペット先進国です。日本と比較すると、ドッグフードの安全基準は非常に厳しくなっています。

最も厳しいアメリカでは、添加物など全ての原材料名の表示義務、ラベルへの表記方法が厳格に定められており、製造方法の確認、製造工場への立入検査なども行われます。

ペットフードは、FDA(アメリカ食品医薬品局)、AAFCO(アメリカ飼料検査協会)の2つの組織が安全性を規定しており、連邦政府と州政府の2段階による法規制がなされています。

FDAのペットフードに関する情報

厳しいペットフード規制があるアメリカですら、1999年にペットフードに含まれるアフラトキシン(カビ毒)によって25匹の犬が死亡、前述した2007年の汚染物質(メラミン)による多数のペットの死亡(150以上のブランド製品がリコール)という大事件がありました。

その他、サルモネラ菌やリステリア菌の汚染、栄養虚偽表示、ビタミンB1欠乏、亜鉛過剰、ビタミンD過剰など、毎年数多くのリコールが発生しています。

衛生的で総合栄養食であることがドッグフードの利点であったにも関わらず、製品によって逆にデメリットになっている事例があります。

ペットフードのリコールの情報はFDA「Recalls & Withdrawals」や、DogFoodAdvisor「Dog Food Recalls and Warnings」から見ることが可能です。

日本では、ペットフードのリコールはほとんど聞きません。しかし、リコールがないから日本のペットフードは安全ということにはなりません。なぜなら、そもそもリコールの対象となる法律がないからです。

どんな小さな問題であっても、きちんとリコールして是正してくれたほうが、消費者にとって安心とも言えます。

アメリカで有名なペットフード「Orijen」は、数々の賞を獲得している高品質なブランドですが、Orijenですら2008年にオーストラリアでリコールされています。

世界的に有名なドッグフード「Orijen」。ヒューマングレード、肉と魚で85%、BHA、BHT、エトキシン不使用。

詐欺的なマーケティング

ペットフード業界だけに限りませんが、インターネット上の詐欺的なマーケティングがドッグフードの信頼を損なっています

ドッグフードランキングの嘘

ドッグフードランキングで検索すると沢山のサイトが出てきますよね。

ドッグフードランキングが全て嘘とは言いませんが、消費者の誤解を招くサイトは多数あります

まず、検索して出てくる一番上から3番目くらいまでのサイト。これは左上に「広告」の文字が付いています。ペットフード会社からお金をもらって宣伝しているだけですから、全く信用できません。

自社(もしくは依頼を受けた会社)を1位として、競合他社を2位以下に落としているので、悪質とも言えます。

アフィリエイトの闇

サイト経由で購入されると、売上の15%を還元」というドッグフードもあります。

アフィリエイターは、高い還元率のペットフードを勧める傾向となるため、本当におすすめかどうかわかりません。

大してペットフードに詳しくないブロガーは、「原材料表示に防腐剤がないからおすすめ!」と短絡的に記載しがちです。しかし、前述したように、日本ではモノ扱いであるペットフードのラベル表記はそもそもが当てにならないので、ラベルと企業広告だけを比較しておすすめなんてとても言えないはずなんです。

詐欺的な広告

以下のようなドッグフードの広告を見たことがありませんか?

不適切な表示例
  • もうアトピーに悩まない
  • 耳のかゆみがなくなった!
  • アレルギー・皮膚炎に悩む犬に
  • 関節を丈夫にします
  • 美しい毛並みを守ります
  • 肥満症の予防に
  • 愛犬のがん予防のために

これらは、すべて薬事表現のガイドラインに違反しており、すべてインチキと言っても過言ではありません

直接宣伝していなくても、「飼い主の声」として同様の謳い文句を掲載している業者も違法です。

実際には効能効果がないドッグフードで、あたかも病気の予防や治療ができるように謳う広告は嘘であり、業界のイメージを落としています

その他にも、「獣医師の96%が推薦!」などの表記も、非常に胡散臭いです。「満足度98%」などもよく見ますが、こういう調査は結果ありきで、お金を支払ってマーケティング会社に依頼しています。

インターネットの広告は取締が緩く、無法地帯です。当ブログでもGoogle AdSense(自動広告)を導入しておりますが、当サイトに限らず、どんなサイトでもそういった詐欺的な広告が表示されますので、注意してください

私が手作り食を選んだ理由

ご飯が待ちきれないゆず

ゆずは、小さい頃から手作りご飯で育てています。写真では、少しだけワンディッシュ(ドッグフード)を混ぜていますが、今はドッグフードはおやつ以外には与えなくなりました。

短期間ですが、ドッグフードだけを与えていた時期もあり、高価なブランドフードや半生フードも試しました。

しかし、以下の理由から、家族で話し合い、結局、手作りに戻しました。

犬に手作りご飯を与えている理由
  • 日本のペットフード安全法で消費者が安心することは難しい
  • 欧州の高価なペットフードを買い続けるなら手作りのほうが安価
  • 料理のついでに作るため、手間も全然かからない
  • 毎日新鮮な食事を与えたい

自家製の食事は犬の寿命を約3年延ばす

2003年にベルギーで発表された、552匹の犬の平均余命を統計的に調べた研究があります。内因性要因では、犬の体格と犬種が寿命に大きな影響を与えましたが、外因性要因では、犬の寿命に大きな影響を与えたのは「食事の種類」でした。

犬の平均余命を調べた研究
  • 自家製の食事(基本的には人と同様のもの)を与えられていた犬の平均寿命は13.1年
  • 加工食品(缶詰保存食品)のドッグフードを与えられていた犬の平均寿命は10.4年
  • 加工食品と自家製の食事を混合して与えられていた犬の平均寿命は11.4年

つまり、人と同じ生鮮食品を与えられていた犬は、加工食品を与えられた犬と比較して32ヶ月以上(約3年)も長生きでした。

この研究が、冒頭で紹介した多和田さんの読んだ論文と同じものかどうかわかりませんが、加工食品よりも生鮮食品のほうが犬の寿命を延ばすという結論は同じですね。

少しでも愛犬に健康で長生きして欲しいのが、私たちの最大の願いです。飼い主にとって、犬の寿命が3年延びることはとても大きな意味を持つのではないでしょうか?

ゆずのカルシウム対策に少しだけ煮干しを混ぜています。犬にはダントツに塩分が少ないサカモトのにぼしが一番おすすめです。塩分は100gあたり1.8gと通常の無塩にぼしの1/2~1/3です。

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生肉ベースの食事は歯周病や外耳炎を防ぐ

やっぱり新鮮なフードが美味しいワン!

数多のドッグフードのリコール問題や犬の健康志向の高まりから、生肉ベースの食事(RMBD=Raw meat based diet)を与える飼い主は、欧米では益々増えているようです。

日本大学の研究では、生肉(獣肉骨)とドライフード(市販のドッグフード)との比較では、生肉を与えた犬のほうが歯垢の付着が少なく、歯肉の炎症が見られなかったと報告されています。

つまり、骨を含む生肉ベースの食事は、犬の歯周疾患を防ぐことが示唆されています。

著書の中で、多和田さんは、飼い犬のバーティー(ゴールデンレトリバー)を生まれたときから「生食」で育てていると語っています。

ドライフードよりも歯石や耳垢がたまらず、耳掃除は生まれてから数回程度しかしていないとのこと。実はこれ、とってもすごいことなんです。

垂れ耳のゴールデンレトリバーは外耳炎を起こしやすく、耳掃除は欠かせないからです。

主に海外サイトですが、生肉を与えているオーナーの声を調べると、多和田さんと同様に、「歯石や耳垢がたまらなくなった」「皮膚炎が改善した」「毛艶が良くなった」などの感想が沢山出てきます。

2021年にアメリカで、28匹の生肉ベースの食事を与えている犬と27匹のドッグフードを与えている犬とで、皮膚、歯、耳の健康状態を評価した研究報告が行われました。

その結果、生肉ベースの食事を摂っている犬は、ドッグフードの食事を摂っている犬と比較して、皮膚、歯、耳の総合的な健康状態は良好であったことが報告されています。

その差は大きなものではありませんでしたが、生肉ベースの犬のほうが平均年齢がかなり高かったことを考慮すると、研究は、飼い主の声を裏付ける結果であったとも言えます。

ただ、RMBDはリスク(細菌や寄生虫による汚染、栄養面の偏り)を指摘する論文も多く、作り方や衛生管理も影響しますので、一概に良いとは言えません

ゆずには、基本的には調理したお肉を食べていますが、今は時々ですが新鮮な牛肉も与えるようにしています。

生肉ベースの食事について詳しくは下記の記事もご参照ください。

手作りって大変?

手作りご飯は、手間がかかると思ってる方も多いのですが、ゆずにあげている食事はとっても簡単です。

また、手作りご飯レシピなど、ブログで紹介しますね。

今回の記事が、ペットの最適な食事を考えるきっかけになってくれたら幸いです。忙しくて食事を作れないなど、各々の家庭の事情は異なるので、無理のない範囲で調べてみてください

参考文献とサイト
  1. 多和田 悟 「犬と話をつけるには」文藝春秋
  2. 多和田 悟「クイール流 愛犬のしつけ方」実業之日本社
  3. 農林水産省「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/petfood/index.html 最終アクセス2022/07/20
  4. 農林水産省「ペットフード安全法 表示に関するQ&A」https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/petfood/p_qa/hyouji.html 最終アクセス2022/07/20
  5. 全国公正取引協議会連合会「ペットフードの表示に関する公正競争規約」https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/pet_food.pdf 最終アクセス2022/07/20
  6. ペットフード公正取引協議会「ペットフード等の薬事に関する適切な表記のガイドライン」https://pffta.org/pdf/guidelines4.pdf 最終アクセス2022/07/20
  7. 京都産業大学「動物の健康を守り、人間の健康にもつなげる “メラミン”によるペット大量死―そのメカニズムの解明」https://www.kyoto-su.ac.jp/project/st/st15_08.html 最終アクセス2022/07/20
  8. HEALTH PRESS「輸入ペットフードを与えはいけない! 危険な防腐剤・酸化防止剤が人間の基準値の100倍も!!」https://www.excite.co.jp/news/article/HealthPress_201604_100_4/ 最終アクセス2022/07/20
  9. 農林水産省「ペットフードをめぐる情勢 – ペットフードの安全確保に関する諸外国の状況」https://www.maff.go.jp/j/study/other/pet_food/pdf/data04_1.pdf 最終アクセス2022/07/20
  10. FDA「Recalls & Withdrawals」https://www.fda.gov/animal-veterinary/safety-health/recalls-withdrawals 最終アクセス2022/07/20
  11. DogFoodAdvisor「Dog Food Recalls and Warnings」https://www.dogfoodadvisor.com/dog-food-recalls/ 最終アクセス2022/07/20
  12. Petful.com「Orijen Pet Food」https://www.petful.com/brands/orijen/ 最終アクセス2022/07/20
  13. INDOOR ENJOY LIFE「「ドッグフードも国産が安全」は大間違い!日本産と海外産の違いは? 」最終アクセス2022/07/20
  14. Gerard Lippert, Bruno Sapy「Relation between domestic dogs’ well-being and life expectancy」 2003, Essay for the Prince Laurent Foundation Price.
  15. 大場 茂夫 「歯周病から見たフードについて」日本大学生物資源科学部 獣医内科学研究室
  16. Hiney K, Sypniewski L, Rudra P, Pezeshki A, McFarlane D. Clinical health markers in dogs fed raw meat-based or commercial extruded kibble diets. Journal of Animal Science. 2021 Jun;99(6):skab133. DOI: 10.1093/jas/skab133. PMID: 33939804; PMCID: PMC8174467.
  17. Davies RH, Lawes JR, Wales AD. Raw diets for dogs and cats: a review, with particular reference to microbiological hazards. J Small Anim Pract. 2019 Jun;60(6):329-339. doi: 10.1111/jsap.13000. Epub 2019 Apr 26. PMID: 31025713; PMCID: PMC6849757.
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この記事を書いた人

人間のお医者さん。医学的見地から住宅や犬のことをブログに書いています。ゆずのことになると、お金に糸目をつけない。でもとても倹約家。なにごとも調べないと気がすまない、ネットサーフィンのスペシャリスト。

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